顎関節症例1

顎関節症

顎関節症 症例1
目次

顎関節症 症例1

1.症例

激しい頭痛を訴えて受診されたこの38歳の男性は一日中パソコン業務をしているとのこと、きっと常に緊張を強いられる毎日なのでしょう
私と話していてもずっと眼をしばたたかせ、唇をピクピクさせています
診査では顎関節に問題はなく、下顎位のズレもごく僅かなものでした
ただ、噛み合わせがとても窮屈で前歯から奥歯までギッチリと噛みこんでいる事が目に付きました
人間の動きにはスムーズに楽に動けるように適度な“遊び”が必要なのですが、それがないと窮屈な動きをしなければならなくなってしまいます

窮屈な咬合がサインになって、無意識に食いしばりをするクセがついたために、顎を動かす筋肉に過度の緊張と疲労をもたらし、それが強度の頭痛をもたらしたと考えられました

日本人の歯は少し外開きに生えているのが普通だがこの人の歯は内向きに傾いていてギッチリと噛み合っている

歯が内向きに傾いているため、アーチの幅が小さくなり臼歯部が内側に入る歯列不正が生じている。
年齢の割には歯の磨耗が少ないため、年齢相応の遊びがなく、これが無意識の食いしばりを誘発している。横向き寝や頬杖の結果である。

どのように噛んでいるかを知る検査

赤:奥歯でひどく噛んでいる
黄:通常の15を遥かに超えてべっちゃりと噛んでいる
白:体重の10倍程度が望ましいのにその2倍の力で噛んでいる。

2.診断

顎関節症 I 型

発症に至る流れ
磨耗の少ない尖った咬合面形態

  • → 歯牙、歯列レベルの嵌まり込み
  • + 仕事上のストレス(パソコン)
  • → 食いしばり/歯軋り
  • → 筋緊張性頭痛

ところで、この人がギッチリした噛み合わせになってしまったのには二つの理由が考えられます。

ひとつは、歯の磨耗が進んでいなくて尖ったままの状態であるという点です。
狭い駐車場に駐車するには車をこすらないように神経を使うようなもので、尖ったままの歯は不自然な衝突を生み出します。

結果として自然な咀嚼運動を阻み、とても窮屈な噛み方をしなければならなくなるのです。
メザシ、裂きイカ、干した芋など硬い食材を食べていた昔の食生活では、ライフサイクルに合わせて都合よく歯の磨耗が進んでいたのですが、軟らかいものばかり食べている私達の食習慣は、成人になっても生えたばかりのような歯を持つような現象を生み出してしまいました。

噛むという動作は学習反射と呼ばれて、仮に何らかの不都合があってもそれを無意識に学習して状況に合った噛み方が出来るようになっています。
幸か不幸か、その為に本人は窮屈さに気づかないことの方が多いのですが、この人の場合はその代わりに筋肉が悲鳴を挙げることになったのです。

もう一つは、横向き寝や頬杖などの習慣などから徐々に歯が内側に倒れたことによって過度に緊密な咬合になったという点です。
これも歯が尖ったままの状態による害と同じで、アーチのレベルで窮屈なかみ合わせになってしまうのです。
人間の歯列は綺麗なU字型をであるのが望ましいのに、この人の先の尖ったV字型である点に注目してください。

以上2点の原因が元になって食いしばりが起き、それが筋肉疲労をもたらしてひどい頭痛を引き起こしたと考えられます。

 

3.治療方針

  • 睡眠態癖への対応
  • 食いしばらない → 歯を接触させない
  • Ams改良型SP ⇔ 再評価⇔リシェイピング
  • 再評価 
  • アーチ拡大
  • 再評価
  • メインテナンス

この人に用いたスプリント
奥歯の接触を回避させて,
筋緊張の引き金にならないように、そして筋肉をリラックスさせるように働く

装着したところ

奥歯は接触しない
前歯でも食いしばらないように

噛み合わせの初期治療前後の経過観察
(左は初診時、説明済み)

  • 面積、咬合力が正常に近づいた
  • 筋リラックスの結果、重心が前方に移動して、奥歯への負担が軽減した
  • 頭痛が少なくなり、全体的にリラックスできるようになってきた

窮屈な咬合からの解放を目的とした矯正治療
尖ったアーチ形態から綺麗な放物線のアーチ形態に

矯正装置:Tアライナー
透明な装置なので装着していても他人からは分からない