顎関節症例2

顎関節症 症例2

削ったのにますます悪くなった原因は食いしばりだった

1.初診時の状態

患者さんは左の噛み合わせが高く、左下の歯の痛みを訴えて来院した48歳の主婦です。
今までに左奥歯を何軒もの歯科で削ってもらったのに、しばらくするとまた高い感じがしてくるとの事です。
近ごろは左下奥歯の根っこも痛くなってきて…
削って低くしてもらった歯がまた高く感じられるとはどう云う事なのでしょう?

患者さんが痛いと言う左下奥歯にはレントゲンで診る限り症状に見合う所見はありません。
根っこの病気もありませんし、歯が割れているワケでもないのです。

高いと感じて何度も削ってもらったという歯(右側の第二大臼歯)はスプーンでえぐったようなクボミになっていて、そこには相手の歯がカッポリと嵌まり込んでいます。このように嵌まり込んでいると、嵌まり込みによる窮屈さを歯のセンサーが感じて筋肉の緊張を誘発します。もしかしたらこれが食いしばりの原因だったのかも知れません。

具体的にどんな風に食いしばっているか調べると…
左奥に赤い色(赤丸部)の密集した領域がある事が分かりますが、これが正にあの第二大臼歯で(1,000ニュートンを超える)非常に強い力で噛んでいることを示しています。

では、何度も削って低くしたのに?どうして再び高く感じるのでしょう?

それは
食いしばりによって顎関節内が圧縮されて噛み合わせが低くなり、相対的に歯は高く感じる事になったと推理されます。

言い換えれば「噛み合せが高い」と感じたのは、全体の高さが低くなったのであって噛み合わせが高くなったのではなかったのです。
つまり、次のような悪循環に陥ったワケです。
食いしばる→低くなる(関節内の圧縮) →高く感じる→削る→ますます食いしばる→・・

2.治療方針

<患者さんがすること>

・意識して歯を離しておく(食い縛らない)

<術者がすること>

嵌まり込んだ形を正常な歯の形に修正する
・歯は鋭敏なセンサーだから
・猫のヒゲと同じです

既存の冠を正常な歯の形に修整しました。

根っこの痛みも歯が高い感じもなくなりました。
終わってみると簡単な事でしたね。
形態修正と患者さん自身が意識的に食い縛りを止めた成果です。

嵌まり込みから解放されて、咬合力(赤丸)と面積(黄丸)が正常範囲に収まり、咬合重心(赤プラス)も中央にもどっています。

3.このケースから学ぶこと1

「削ってますます悪くなった」と言う現象が起きる理由が理解されたと思います。
ポイントは現在の状況に至った原因をよく考えて、それを基にした取り組みにあります。

クセを治すことがどれだけ大切か、分かっていただけたでしょうか?

4.このケースから学ぶこと2

歯は鋭敏なセンサーであり、
歯の形は触覚の働きをしているのです。

この事を実証するために小さな実験をしてみました。

同じ歯に形の違う冠を二つ(一つは良い形に、もう一つはツルツルに磨り減った形に)作りました。
ガムを噛んでみると歯の形が良いと綺麗な噛み方ができ、ツルツルの冠では変な噛み方しか出来ません。
歯が鋭敏なセンサーであり、形の違いを蝕知して噛み方を変えるのです。

比較的安定したサイクルを描いている

サイクルが小さくバラバラで、噛む場所も原点からずれている